第一志望の傾向
令和5年3月の公立中学卒業予定者 (令和4年度現在の公立中学3年生) は、77,692名で、前年を1,290名上回ります。(男子818名増・女子472名増)。公立中学3年生の数は前々年度に底をうち、増加しはじめました。令和12年度(現小学1年生が中学3年生になる年度)をピーク(約8万名ちかく)として漸増、その後5年間で15,000名急減する見込みです。都立全日制高校の学科別に志望者数の前年比較をみると、普通科が450名の増加、商業科が60名強の増加(男子が増加)、農業科70名強の増加、家庭科80名強の増加、総合学科約300名の増加ですが、工業科が200名強の減少です(3年連続減)。
都立全日制高校第1志望者の割合は連続して減少しています。私立全日制高校(国立・他県含む)第1志望者は増加を続けていましたが、今年度は一服した形です。14年前のリーマンショック以降、都立第1志望者の割合は70%台でしたが、5年前に私立志望者が増加し、その後さらに私立高校への流れが進みました。要因は、東京都版の私立高校の授業料軽減の拡張策(実質授業料無償化の対象になる家庭年収の上限が760万円から910万円へ拡大)や、私立高校の入試相談制度(コロナ禍で早く合格を決めたい心理と結びつく)にあると推測できます。
また、私立通信制高校を志望する生徒も増え続けています。平日に通学するタイプ(週1日・3日・5日など)や、ネットを活用した授業形態、多様な授業内容は、コロナ禍でさらに生徒や保護者からの人気が高まっているということでしょう。
都立高校に関して詳しく分析すると、倍率が落ち着いている例として、小山台・三田(男子)・向丘・小松川・本所・日本橋・南葛飾などがあり、復調してきている例として、葛飾野・墨田川・晴海総合・王子総合など、また新校舎効果も加わって堅調な例として、江北・竹台・城東・小岩などが挙げられます。
普通科以外では、専門色がはっきりと伝わる学科や、時代の要請 (グローバル化・情報技術化・デザイン・美術・舞台表現・動物・環境系…)に即した学科、身につけた資格・技術・感性が自身の一生を充実させたり豊かにさせたりすると思える学科は人気があります。 例としては、国際・多摩科学技術・工芸(デザイン・グラフィック)・園芸(動物)・瑞穂農芸(畜産)・総合芸術(美術・舞台表現)などが挙げられます。一方で、商業科・工業科は依然として低倍率が続き、全入(志望者全員が合格)が予想される学校が数多くあります。
都立高校の今後の動向
男女別募集を行っている学校では、3段階のステップを経て男女合同募集になります。令和5年度入試では2段階目として男女別定員の緩和割合を1割から2割に拡大します。速ければ6年度入試で完全な男女合同選抜に変わるかもしれません。制服をリニューアルした学校は、特に女子の志望者に影響を与えます。 令和3年度に大山が、4年度に蒲田・日本橋・昭和・久留米西が、5年度は第四商業が制服を変更します。服装や頭髪等の生活指導を強化する伝統校は一時的に志望者が減りますが、学力向上策などの改革が伴って信頼が増せば、志望状況は回復の方向に向きます。
都立定時制単位制高校 (昼夜間定時制)は、生徒の多様性・不登校・学び直しへの対応が期待でき、居心地のよさなどもあり、中退率の低下にもつながっています。定時制の学費は全日制よりもかなり安価ですが、公立高校の就学支援金制度で、授業料についての差はなくなっています。
チャレンジスクールとして、小台橋(令和4年度に荒川商業を改編)が新設され、令和7年度には立川地区にも設置される予定です。「好きなものを、好きなときに、好きなだけ」科目選択できるという合言葉を掲げており、普通科とは違う特色のある教育が期待されています。